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借り物の町と借り物のわたし(14)

03 27, 2009 | Posted in 小 説

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「何や、われ。口利かれへんのんか。」
スポーツ新聞を乱暴に置き、彼は予想通り、凄みのある顔で睨んできた。
ちらと見ると、完全に酔っている。馴染みの野球チームが昨夜惨敗したであろうことも、新聞から見てとれた。
しかしながら、このような展開になる最も大きな理由は、今日のわたしはついてないということだ。

どうしよう、何か言った方が良いだろうか。
いや、何を言っても、良い展開にはならないだろう。と思いつつ、思わずこう言ってしまった。
「ゆ、夕べの阪神は、ざ、残念でしたねえ。」

拍車をかけるとはこういう事を言うのだろう。いや、油に火を注ぐと言えば良いのか。
「われ、ええ事いうやんけ。ちょっと、ここ座らんか。」
完全に、彼は怒っていた。無理に微笑もうとして、口の端が震えている。
目は酔いも手伝って真っ赤に充血し、手招くようにカウンター席を引き、はすに構えたその体からはオーラのような凄みが発せられていた。

「え、えーと、じ、時間がないので、ち・ち、ちょっと無理です。」
何が無理なのだろう。そもそも無理という表現がおかしいので、しっかり突っ込まれた。
「無理ってなんじゃい。どうせ、外回りさぼって、イカ焼き頬張ろうっていうんやろ。わしが、横に来い言うてんねん。」

気が付けば、彼はわたしの横に来ていた。既にがっしり、肩を掴まれていた。
渋々、彼の隣に座る。

「おっちゃん、あんまりワヤしたらあかんでえ。」
イカ焼きのイケメン青年がそう言った。
「うるさいわ、三郎。しっかり、イカ焼き焼いとらんかい。」
青年の名前は三郎というらしい。
きっと、三男坊なのだろうなどと、どうでもいい事を考えていると、どかっと目の前にコップが置かれた。

注がれるビール。目を白黒させていると、隣の土建屋がこう言った。
「あんた、分かってるわ。阪神負けよって、清々した。どいつもこいつも、関西ゆうたら、阪神しかないみたいな言い方しよる。あんた、ほんまええ事言うわあ。」
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借り物の町と借り物のわたし(13)

03 25, 2009 | Posted in 小 説

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「らっしゃい。もうちょっと待ってねー。」
威勢の良い声で、それでもこちらを見向きもせず、青年はプレス機を動かす。
どうやら、どこかの芸能人のような客が来るのだろう。ざっと、三十枚くらいのイカ焼きが既に生産されていた。

そうこうしていると、青年はプレス機を止め、わたしに話掛けてきた。
「お待たせしてごめんなー。何にしよか。と言ってもイカ焼きしかないけどなー。」

「すみません。ほな、1枚ください。」
わたしは元々が関東の出身なので、余り関西弁は使わない。
特にわたしが住んでいる神戸は、そこまできつい関西弁を使う人もいないので、写らないのだろう。とはいえ、たまにはこんな感じで出てしまうのだ。

先程焼きあがったものにソースを付けて渡すのかと思いきや、別に1枚焼いてくれるようだ。やはり、先程の大量生産したものは、既に客が付いているようだ。

少し顎鬚を生やし、長めの髪を後ろで束ねた上にタオルを巻いたその青年は、こうして見るとなかなかのハンサムだ。これはもしかすると、この辺のマダム達に様相が気に入られ、結構な売上を上げているのかも知れない。
わたしも無愛想なおばちゃんがいる店と、愛想の良い可愛いお姉さんがいる店なら、断然後者に通うことだろう。もちろん、味が良いということは大前提であるが。

また、店内に少しだけ、今風に言うならイートインのスペースがある。
カウンターが三席と、四人掛けのテーブル席が一つだけであるが、既にカウンター席の一番奥には土建屋風の男が一人短い煙草をくゆらせながら、スポーツ新聞を広げている。
ビールの空瓶が既に二本並んでおり、続く一本も間もなく空になるかというところだ。

わたしは前述したように、気が弱い。
なので、彼を一見したが、じっと見ずすぐに目を伏せた。
にも関わらず、予想した通りの低いバリトンのどすの効いた声で、彼は言った。
「兄ちゃん、なんか用か?」
どうも、思ったより、眺めていた時間が長かったようだ。
しっかり見ているのを、見られてしまっていたようだ。いや、目も合ってはいないのだが。

最初は無視していた。黙ったまま、目を伏せていた。
ところが、どうも虫の居所が悪かったようで、彼は更にこう怒鳴った。

借り物の町と借り物のわたし(12)

03 21, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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先程、買おうとしていた週刊誌を探す。しかし、売り切れているのか、それとも本から仕入れていないのか、見当たらない。

がらがらと少々重たいガラス戸を開く。
エプロンを付けたおばさんが、ぶっきら棒に「いらっしゃい。」と言った。
彼女は平積みしている新刊本の上の埃を、はたきで掃除しながら、本を整理している。
外見よりも、きれいな店内だった。

新刊本を、物色してみる。
この頃、余り見ていなかったため、目新しい本ばかりだが、読みたい本は見当たらない。
そもそも、知っている作家の本がない。
多少、首を傾げるも、次はお目当ての漫画本のコーナーを見ることにした。

ところが、こちらにも目指す本は置いてなかった。
がっかりして肩を落としていると、店員のおばさんが声を掛けてきた。

「お探しの本がございませんか。」
先程のぶっきら棒さとは裏腹に、思ったより優しい声でそう尋ねてきた。
「いえ、そうではないです。」
漫画本の新刊を、大方昼間になるかというこの時間に探している自分が恥ずかしくなって、ついそう言ってしまった。
また、そのように答えてしまったことで、余計に恥ずかしさが増し、足早に店を出てしまったのだ。

「しまった。道を聞けば良かった。」
恐らく、かなり長い間勤めていそうな店員だったので、道はよく知っているだろう。
駅までの道なら教えてくれるだろうが、元々人見知りの激しいわたしは、恥ずかしい思いをしてしまったその店に、もう一度入ろうとは思わなかった。

となると、次の店はクリーニング屋かイカ焼き屋だ。
腹の減り具合もそろそろ限界なので、ここはやはりイカ焼き屋だろう。
見ると、先程ソースの焦げ具合を確認していた青年は、次々とプレス機を押し下げ、イカ焼きを量産している。
そんなに作って売れるのかとも思ったが、実は隠れた名店なのかも知れないという思いを抱きながら、そっと店先に近付いた。

借り物の町と借り物のわたし(11)

03 20, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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書店、クリーニング屋、たこ焼き屋か何か、軒先に湯気を出し、香ばしいソースの香りを漂わせる。
わたしの気持ちは、一気に昂ぶった。
とはいえ、今までの経緯もあり、自転車を降りて押しながら、ゆっくり恐る恐る近づいてみた。近づくと、煙のように無くなってしまいそうで、怖かったのだ。

今回は幸運だった。当たり前だが、近づいても無くなったりしない、それどころか全ての店が開いているのだ。
逆に言えば、普通の店舗が営業を始めるような時間に既になっているということだが、それはそれ。今は開いているという幸運を、ただ歓迎することにしよう。

「まずは、どこへ行こう。」
たこ焼き屋だと思っていた店は、どうやらあれはイカ焼きだ。
大阪の方ではよく見掛けるが、この辺ではとんと見掛けない。
卵を溶き広げた上に、烏賊の下足などを加え、熱い鉄板でプレスする。
最後にソースと、場合によってはマヨネーズをかけ、折り畳んだ形で客に提供する。
ある百貨店で売っているこれは、長蛇の列をなし、有名芸能人が大量に買い込む、大阪を代表するB級グルメだ。

しかも、屋台ではなく、店舗を構えている。ソースの味が甘めなのが余り好みではないが、空腹の上、冷えの激しい現在のわたしには、非常に嬉しい食べ物だった。

ところが、どうもまだ出来上がっていない。
ここのやり方なのだろう。恐らく鉄板の温度を見る為に、ソースだけ焦がしているのだ。
思えば、こんな朝のうちに作っても、売れるような商品ではない。(先程の百貨店では別だが。)

二十代半ばの青年が、真剣な眼差しで、焦げるソースを睨んでいる。
かなり真剣に作っているのだな、と思ったが、できていないのでは仕方がない。

わたしは、まず書店に向かうことにした。

書店の前に自転車を止め、書店の様相を確認した。
ガラス戸の外には、週刊誌が並べられ、戸の中は薄暗い。
典型的な町の本屋であり、地方型の大型店舗に追いやられ、閑古鳥が常に鳴いていそうな佇まいだった。

借り物の町と借り物のわたし(10)

03 18, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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肩を落として、自転車を押す。
もう、乗って漕ぐ元気もない。

どうして、こんな事になってしまったのだろう。
これならいっそ、車にでも撥ねられれば、もっと明確な不幸なのだが。
じわじわと、そう真綿に包まれるような不幸の連続。
体も深々と冷え始め、暗い気持ちが一層暗くなった。

そんな気持ちで自転車を押していると、少し開けた高台に出た。
捨てる神あれば、拾う神あり。
線路だ。線路が見える。

右になだらかに上る坂道沿いに、見下ろす形に線路が延びている。
思わず駆け寄ったその時、通り過ぎる通勤特急。
確かに、いつも乗っている電車だった。
わたしの最寄の駅は地下にあるが、この路線は二駅先から地上に上がる。
ということは、気付かないうちに相当先まで進んでしまっていたのだ。

「分からない筈だよ。」
今思えば、そんな筈はなかったのだが、この時はそう思った。
三駅先は有名な繁華街で、ちょくちょく帰りに寄り道をしていた。
深酒をしてしまった時などは、酔い覚ましに家まで歩くこともある。
その際、元来歩くことが好きなわたしは、結構色々な道を通る。

一回も迷ったことはなかった。

確かにわたしは方向音痴なのだが、この街は東西に延びる街で、少し入り組んだ道でも、歩くべき方向は結構はっきりする。
勿論、袋小路に出くわし、戻らなければいけないような羽目にあったことはある。
しかし、今みたいに完全に迷子になったような事は、この街では一度もなかった。

さあ、どっちへ進もう。
線路沿いに出たからには、線路に沿って移動すれば、いつかは駅に出くわす。
駅に行けば、流石に連絡手段は何かあるだろう。
何より、もうそこから電車に乗ればいいのだ。
進んでいるのだから、わたしの定期券で充分に乗車できる。
さっきは落ち込んでいた気持ちが、一気に昂ぶる。
わたしは、坂を上る方向に進むことに決めた。
今より高台に上がれば、それなりに周りを見渡せる。

結構急な上りだったので、そのまま自転車は押して行く。
暫く進むと、上りが終わりそうだということと、その頂上には、線路を横切る形で歩道橋が付いていることが分かった。

進んでいる間にも、電車が何本か通り過ぎる。
ふと時計を除くと午前十時を少し過ぎる時間。就業時間からは大きく時間を過ぎている。
ただ、諦めもあったのか、余りもう焦ってはいなかった。

坂を上り切ると、歩道橋は思った通り、坂の頂上に線路を跨ぐ形であった。
良くドラマなんかでは、思い悩んだ人が飛び降りるよな。
そんな不謹慎な感想を持つのも、体と心が一気に疲れてしまったからだろうか。

ただ、勿論飛び降りる程、悩んでいる訳もなく、わたしは歩道橋の真ん中まで、自転車を押して行った。幸運なことに、この橋は自転車でも渡れるようになっていたのだ。

電車が行き交う度に、震える歩道橋に立ち、周りを見渡す。
確かに、学生が行っていた通り、コンビニは見当たらない。
しかし、線路の反対側の坂の下に、何やら小さな店が軒を並べている。
そして、その前に何人かの学生達がたむろしている。

どうせ、進む方向だ。
自転車に跨り、先程とは反対側の道に出たわたしは、一気に坂を下った。

実はかなり期待していた。
店があるということは、電話もあるだろうし、道も教えて貰えるだろう。
大分、冷えてきたわたしには、少し温かいものでも口に出来たら、という希望もあった。
独り言でも、それを口に出せば、わずかな幸運が逃げてしまいそうで怖かった。

坂道は、浮き立つわたしの心を察するように、軽やかに自転車を運んでいく。

一気に下ると、少し開けた場所に出た。
二車線道路の曲がり角。線路に沿うように、三店舗が軒を連ねていた。

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