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借り物の町と借り物のわたし(10)

03 18, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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肩を落として、自転車を押す。
もう、乗って漕ぐ元気もない。

どうして、こんな事になってしまったのだろう。
これならいっそ、車にでも撥ねられれば、もっと明確な不幸なのだが。
じわじわと、そう真綿に包まれるような不幸の連続。
体も深々と冷え始め、暗い気持ちが一層暗くなった。

そんな気持ちで自転車を押していると、少し開けた高台に出た。
捨てる神あれば、拾う神あり。
線路だ。線路が見える。

右になだらかに上る坂道沿いに、見下ろす形に線路が延びている。
思わず駆け寄ったその時、通り過ぎる通勤特急。
確かに、いつも乗っている電車だった。
わたしの最寄の駅は地下にあるが、この路線は二駅先から地上に上がる。
ということは、気付かないうちに相当先まで進んでしまっていたのだ。

「分からない筈だよ。」
今思えば、そんな筈はなかったのだが、この時はそう思った。
三駅先は有名な繁華街で、ちょくちょく帰りに寄り道をしていた。
深酒をしてしまった時などは、酔い覚ましに家まで歩くこともある。
その際、元来歩くことが好きなわたしは、結構色々な道を通る。

一回も迷ったことはなかった。

確かにわたしは方向音痴なのだが、この街は東西に延びる街で、少し入り組んだ道でも、歩くべき方向は結構はっきりする。
勿論、袋小路に出くわし、戻らなければいけないような羽目にあったことはある。
しかし、今みたいに完全に迷子になったような事は、この街では一度もなかった。

さあ、どっちへ進もう。
線路沿いに出たからには、線路に沿って移動すれば、いつかは駅に出くわす。
駅に行けば、流石に連絡手段は何かあるだろう。
何より、もうそこから電車に乗ればいいのだ。
進んでいるのだから、わたしの定期券で充分に乗車できる。
さっきは落ち込んでいた気持ちが、一気に昂ぶる。
わたしは、坂を上る方向に進むことに決めた。
今より高台に上がれば、それなりに周りを見渡せる。

結構急な上りだったので、そのまま自転車は押して行く。
暫く進むと、上りが終わりそうだということと、その頂上には、線路を横切る形で歩道橋が付いていることが分かった。

進んでいる間にも、電車が何本か通り過ぎる。
ふと時計を除くと午前十時を少し過ぎる時間。就業時間からは大きく時間を過ぎている。
ただ、諦めもあったのか、余りもう焦ってはいなかった。

坂を上り切ると、歩道橋は思った通り、坂の頂上に線路を跨ぐ形であった。
良くドラマなんかでは、思い悩んだ人が飛び降りるよな。
そんな不謹慎な感想を持つのも、体と心が一気に疲れてしまったからだろうか。

ただ、勿論飛び降りる程、悩んでいる訳もなく、わたしは歩道橋の真ん中まで、自転車を押して行った。幸運なことに、この橋は自転車でも渡れるようになっていたのだ。

電車が行き交う度に、震える歩道橋に立ち、周りを見渡す。
確かに、学生が行っていた通り、コンビニは見当たらない。
しかし、線路の反対側の坂の下に、何やら小さな店が軒を並べている。
そして、その前に何人かの学生達がたむろしている。

どうせ、進む方向だ。
自転車に跨り、先程とは反対側の道に出たわたしは、一気に坂を下った。

実はかなり期待していた。
店があるということは、電話もあるだろうし、道も教えて貰えるだろう。
大分、冷えてきたわたしには、少し温かいものでも口に出来たら、という希望もあった。
独り言でも、それを口に出せば、わずかな幸運が逃げてしまいそうで怖かった。

坂道は、浮き立つわたしの心を察するように、軽やかに自転車を運んでいく。

一気に下ると、少し開けた場所に出た。
二車線道路の曲がり角。線路に沿うように、三店舗が軒を連ねていた。
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