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借り物の町と借り物のわたし(9)

03 11, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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コンビニだ。コンビニエンスストアだ。
今日日、コンビニなら電話もある。もし無くても、店の電話をちょっと借りるか。
この頃は、一時と違い、コンビニの店員は非常に親切だ。
大きな声で挨拶し、愛想もいい。

なけなしの千円だが、ガムの一つ、コーヒーの一本なら買える。
それなら、親切な店員たちは、喜んで電話を貸してくれるだろう。
それに、そろそろトイレにも行きたくなってきた。
体も冷えてきたので、肉まんの一つでも頬張りたい。ホットコーヒーも捨てがたい。

昼飯は、タカヤマに金を借りよう。
前の帳簿合わせの時、売上の数字が合わなくて、四苦八苦していたところを助けてやった。
もしかしたら、奢ってくれるかも知れない。

それなら、ぱあっと千円使ってしまおう。
いつもは立ち読みしていた週刊誌。買い損ねた漫画の単行本。
ポケットティッシュに二色ボールペン。

そうすれば、最上の笑顔で貸してくれるだろう、電話を。
もう満面の笑みを持って貸してくれるだろう。

一瞬のうちに、かなりの妄想に耽ったわたしは、青だったり、緑だったり、はたまた三色の原色が重なったりする、お馴染みの看板を探しながら、自転車を走らせた。

ない所には、ないようだ。
もう完全に見知った場所ではない。
ちょっとタイムスリップしたのかと、勘違いするような景色。
いや、特に古い家がある訳ではないのだが、何か古い、古臭い。

「この辺に、コンビニはないかな。」
通りかかった学生に、尋ねてみた。
「いや、そんなお店はありませんね。」
変な答えだが、非常に簡潔な答え。この辺に、コンビニはないのだ。

さっきの妄想が、音を立てて崩れ去る。
肉まんも、ホットコーヒーも、楽しみにしていた漫画本も...

借り物の町と借り物のわたし(8)

03 09, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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諦めの溜息を付きながら、わたしはもう一度、小銭入れの中を探った。
見事なまでに空だ。仕方なく、札入れの方を取り出し、なけなしの千円札を取り出す。
もう1箱買って、お釣りを貰おう。

気が付かないうちに婆さんは、窓口の中から消えていた。
その上、ご丁寧に中から木戸を閉めており、中を伺うこともできない。

何てことだ。

しかし、続く不幸に慣れたのか、わたしは変に落ち着いていた。
なら、自動販売機で買おう。いや、両替しよう。
しかし、確かに隣に自動販売機は立っているのだが、電源が入っていないのか、全くどのボタンも光っていない。
試しに札を入れようとしても、全く吸い込む様子がない。

万事休す。

相変わらず、携帯電話は圏外表示。木枯らしが身にしみる。

もういいか。
今日は無断欠勤だ。大事な締め日に無断欠勤。
火が出る程、怒られるだろうが、仕方ない。

わたしは頑張った。
ちゃんと連絡を入れようともした。いつも通り、家も出た。
一生懸命、自転車も漕いだし、タバコ屋の婆さんとも戦った。

誰が責めるか。いや、皆責めるだろう。責めるに違いない。
しっかり遅れ、しっかり迷子になり、壊れた携帯電話に四苦八苦。
格好悪いこと、この上ない。
そうだ。蔑まれ、罵倒され、馬鹿にされる上、怒鳴られる。

ぶるっと身震いをして、次の目的地を目指し、自転車を漕ぎなおした。
最初からそうすれば良かった。辺鄙なタバコ屋で、吸いもしない煙草を買って小銭を失くすより、そこを目指して走り続ければ良かった。


借り物の町と借り物のわたし(7)

03 07, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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プッシュホンのダイヤルに、所属のダイヤルインのナンバーを入れる。
電話の呼び出し音がするかと思いきや、聞こえてきた音声は、その電話番号には掛かるべき相手がないことを知らせるものだった。
「お掛けになった電話番号は現在、使われておりません。」

首をかしげながら、受話器を置く。
確かに、うろ覚えのダイヤルではあったが、そこまで耄碌したのか。
もう一度、受話器を取り、ダイヤルし直す。
ふと、思い留まり、今度は会社の代表電話番号をプッシュした。
「お掛けになった電話番号は...」

どうも、おかしい。
記憶力には自信はないが、15年以上経理畑で仕事してきたため、言っても、人より数字には強いと思っている。
電話番号は特にそうで、同僚が名刺をあさっているそばで、何も見ずに取引先に電話を掛けたりできた。

携帯電話に頼り過ぎていたのだろうか。
そういえば、携帯以外から会社に電話するなんぞ、とんと、ここ数年やっていない。
思い返して、今度は104番をプッシュした。
「はい、104番。電話番号案内です。」
「大阪市北区の株式会社シモヤマをお願いします。」
「代表番号のご案内でよろしいでしょうか。」
「はい。」
「それでは、番号をご案内致します。」
電話番号案内のオペレータがそう言って、メモを取ろうと手帳を取り出した。

ガチャン。

10円硬貨の時間が切れた。
おいおい、こんな落ちかよ。
つまらないコントの落ちようだと思いながら、再度10円を取り出す。
手帳を持ちながら、取り出したものだから、硬貨はわたしの手からするっと落ちてしまい、無情にも溝の隙間から、もう二度と返ってこない場所に行ってしまった。

仕方ない、100円で掛けるか。

借り物の町と借り物のわたし(6)

03 06, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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わたしは2ヶ月前から禁煙している。それまでは、日に1箱は空ける、まあ今頃ではヘビースモーカーな方だろう。会社と妻の共同戦線(といっても、別に結託している訳ではないが。)により、禁煙を止む無くされた。

両替を頼もうと、窓口に近寄る。
愛想の悪そうな婆さんの顔を見て、嫌な予感がした。
「電話を掛けたいので、100円を両替して貰えますか。」
「10円ないよ。その電話、100円でも掛けられるけどね。」

なんとまあ、思った通りの反応か。
思わず舌打ちしそうなところをぐっと堪え、それでも100円掛けるという行為が、不幸が重なるこの朝に、何とも我慢出来ず、わたしは2ヶ月の封印を解くことにした。
「マイルドセブン...いや、セブンスターを貰えますか。」

苛苛すると、わたしはきつい煙草を吸う。久しぶりだと、さぞ旨いものだろうと思いながら、ふと大事なことに気が付いた。

「煙草は300円じゃないか。まずい、10円のお釣りはないぞ。」
当たり前である。ついこの間、300円に値上がりし、妻にしてみれば、私の禁煙を更に喜ぶ結果となった訳だが、今この時点では正に本末転倒な結果となってしまった。

「はい、280円。」
一瞬、我が耳を疑った。ぽかんとしていると、
「早くしとくれよ、寒いんだから。300円出したら、20円のお釣り。そんな計算も出来ないのかねえ。」と憎々しげに、婆さんが言う。
「わ、わかりました。じゃあ、300円。」
20円のお釣りを貰うと、ぴしゃりと窓を閉じてしまった。

婆さんは呆けているのか、値段を間違えたに違いない。
憎たらしい口を聞かれたこともあり、あえて忠告はしなかった。
兎に角も、わたしはこの朝初めての目的を果たしたのだ。

「この電話、使えないってことはないだろうな。」
早速、煙草に火を付けたいところだが、ここはまず連絡をしてからだ。
受話器を手にし、10円硬貨を投入する。


借り物の町と借り物のわたし(5)

03 04, 2009 | Posted in 小 説 | Thema 小説・文学 » 自作小説

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今更ながら、かなり大きなミスをしたことに気が付いた。
引き返そうにも、道が分からない。大の大人が、地元で迷子だ。
情けない気持ちで時計を除くと、始業時間まであと10分。
「こりゃいかん。」
携帯電話を手に取るが、壊れているのかやはり圏外表示になっていた。

兎も角、電話ボックスを探そう。まずは連絡を入れないと。
いつもの日なら少しぐらい遅れても、タイムカードなんぞのない我が社では、あまり大したことではない。しかし、今日は朝礼があることを思い出した。
今日は確実に遅れる。怒られるだろうが、仕方ない。

ところが、昨今電話ボックスなどというものは、携帯電話の爆発的な普及に伴い、次々に街から姿を消していた。また、こういうものは必要なとき程、見つからないものだ。
始業時間は迫ってくるが、一向に電話ボックスは見つからない。

焦ってきた。

うちの上司は比較的温厚な人だと思う。
しかし、遅刻だけは非常にうるさい。ましてや、無連絡などというものなら、烈火の如く、怒るに決まっている。
この頃は当たり前のように携帯電話を持っていたため、連絡手段が常にあることの有り難味をとんと感じていなかった。

会社に着いたら、手垢で汚れた携帯電話を磨いてやろうなどと、場違いなことを思いながら、ふと交差点の角に目をやった。

タバコ屋だ。

少々時代外れな、昔ながらのタバコ屋の窓口横に、微妙に懐かしい緑色の電話。
かろうじてテレフォンカードなどというものが使える電話を見て、ほっと胸を撫で下ろした。

テレフォンカードなどはとうに持たなくなっていたので、10円玉硬貨を小銭入れから探す。こんな時に限って、昨日帰りに寄ったコンビニで使い果たしていた。
「100円を両替して貰おう。」



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